音を楽しもう◎中兵庫の音楽人紹介

兵庫県の真ん中から、音楽人の情報を発信します。

個性派メンバーが奏でる一体感あるメタル◎Sweet Temptation

こんにちは。中兵庫音楽人発信委員会ライターのあんこです。前回の特集からしばらく間があいてしまい、さらに年が明けてからすでに2か月が経ってしまいました…本当にお待たせしてごめんなさい!今年も引き続きどうぞよろしくお願いします。
さて、2020年最初に紹介する音楽人は「Sweet Temptation(スイートテンプテーション)」のみなさん。オジサマ2人と女子2人の、なんと年の差約30歳のメタルバンドです。メタルには疎い私ですが、メンバー一人ひとりがとても魅力的で、それぞれの人柄にぐっとフォーカスした記事に仕上がりました。今回も楽しんでいただければうれしいです。

キーパーソンのドラム×救世主のボーカル×確かな腕のギターとベース=「すいてん」

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メタルバンド「Sweet Temptation」


──さっそくですが…若い女の子とオジサマのこの図、なんだかほほえましいですね(笑) ギターのmaaakun(まーくん)さんとドラムのyu-na(ゆーな)さんは親子だと聞いています。年の差も含めて「すいてん」の魅力に迫ってみたいと思いますが、まずはバンド結成のいきさつと、メタルってどんな音楽なのかを教えてください。


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右から、ギターでリーダーのmaaakunさん、ドラムのyu-naさん、ベースのズッキーさん。


maaakun 娘のyu-naをドラマーとして育てたいというところから始まりました。メタルバンドのドラムは、ギターやベースに比べてプレイヤー人口がいちばん少ないパートなんですよ。そもそもメタルは重くて暗い雰囲気で、速さも求められるので。ぼく自身は以前は姫路で別のメタルバンドをしてたんです。ベースが辞めたのをきっかけにズッキーさんが加入してくれたんですが、地元(小野)を拠点にしたいと思ってズッキーさんを誘って「すいてん」を立ち上げました。ただ、ボーカルがなかなか決まらず、加入してもすぐに脱退っていうのを繰り返してて。今年(取材時は2019年12月)の夏にやっとようちゃんの加入で現メンバーになりました。

──maaakunさんとズッキーさんは以前から一緒にバンド活動をされていたんですね。ボーカルのようさんは、大阪在住ということもあり残念ながら今日は来ていただくことがかないませんでしたが、個別にお話をお聞きしているので、みなさんのお話の間にちょこちょこ紹介していきますね。yu-naさんありきで立ち上げたバンドということですが、yu-naさんはお父さんの影響でメタルにはなじみがあったの?

yu-na 特に好きではなかったんですが、中学時代、吹奏楽部でパーカッションをやっていてドラムは好きだったので、maaakunに誘われて軽い気持ちでバンドを始めました。

──そうなんですね。半ばお父さんに引きずり込まれたという感じですね(笑) 吹奏楽部のお話、あとでお聞きしたいと思います。maaakunさん、ズッキーさん、おふたりはそれぞれ楽器歴は?

maaakun ギターは13歳ぐらいからはじめましたね。オジー・オズボーン(元「ブラック・サバス」のボーカリスト)のバンドのギタリストだったランディ・ローズの曲でギターソロに目覚めました。それからずっとメタル一筋ですね。社会人になってからはブランクがあったけど、仕事をしながら神戸や加古川などで弾いてました。

──メタル一筋ですか!ブランクがありながらも10代から楽器を続けられるっていうのはステキですね。

ズッキー ぼくも14ぐらいからですね。最初はギターを弾いてたんですが、バンドを組むときにベースがいなくてベースをはじめたんです。学生時代は吹奏楽でサックスやパーカッションもやってたんですよ。結婚して兵庫に来るまでは横浜にいたんですが、ストリートで朝までギター弾き語りなんてこともありましたね(笑) ずっとロックをやってきましたが、兵庫に来てmaaakunに出会って、今こうやってメタルをやってます。

──ズッキーさんもmaaakunさんに導かれてメタルの世界に入ったということですね。それにしても、朝まで弾き語りとは!なかなかできることじゃないですよね(笑) そもそも、大都会の横浜からなんでまた兵庫のこんな(?)ところに?

ズッキー 嫁がこっちの人だったんです。ぼく関西にちょっとあこがれがあって。関西弁ってなんかいいじゃないですか。で、ついていきますって言ってこっちに。でもね、当初は大阪の道頓堀のような風景を期待してたんですが、なんか全然違う風景でどんどん山の中に入っていっちゃって。

──気づいたらこんな田舎に(笑)

ズッキー そうそう(笑)

──さきほど、ボーカルがなかなか見つからなかったというお話が出ましたが、ボーカルがいないとそもそも活動ができないですよね?

maaakun 興味を持って来てくれる人はいたんですが、続かなくて脱退してしまうってことが多かったんですよ。メタルはデスボイスやシャウトなど独特の歌い方だし、声量もいる。だから難しいんでしょうね。そんなときにようちゃんが入ってくれたんです。バンド自体は初めてだったそうですが、メタル好きで。あと、yu-naは自分からしゃべりかけたりしないんですが、ようちゃんはよくしゃべってくれて、気が合うみたいで。それも含めてまさに救世主ですね。

yu-na すごくフレンドリーで、ようちゃんが入ってくれてからバンドが楽しくなりました。

──ようさんが加入されて、やっと「すいてん」が本格始動したわけですね。ようさんにyu-naさんの印象をお聞きすると、「ロリドラム、尊い!」とのことでしたよ(笑) 一緒に活動していくとなると、やっぱりメンバー同士の相性なども大事になってきますよね。はじめにおっしゃったように、メタルは重くて暗い雰囲気だから特に、ボーカルも楽器も世界観を作るのが難しいんじゃないかと思います。演奏曲は、コピー、オリジナル問わずですか?

maaakun どっちもやりますね。イベントではコピーが多いかな。直近のライブでは「BABYMETAL(ベビーメタル)」をやりました。

──すみません、私、「BABYMETAL」をよく知らなくて…。どんなバンドなんですか?

maaakun 女性3人組のメタルダンスユニットで、ライブの時にバックで「神バンド」と呼ばれるハイクオリティのバンドが演奏してるんです。イベントの時は彼らを真似て白装束で演奏しました(笑) 海外でも人気が高くて全米でオリコンチャートに入ったりしてますね。

──そうなんですね。ハイクオリティな演奏をコピーできるとは、さすがです。オリジナルは主にmaaakunさんが手掛けられてるんですか?

maaakun yu-naと行ったり来たりですね。ぼくが曲を作ることもあれば、yu-naが作ることもありますが、お互いやりとりしながら少しずつ完成させていきます。以前作って眠ったままの曲に手を加えて新たに形にすることもありますね。ぼくは曲作りのみで、作詞は今のところだいたいyu-naが。

yu-na 作詞をするときは、メロディを何度も聞いて自分なりにイメージを膨らませて、バンドの雰囲気にあった歌詞になるようにストーリーを考えます。

──なるほど、おふたりのやりとりの過程があって「すいてん」のオリジナル曲ができるわけですね。クスッと笑える話題から曲作りのマジメなお話まで、お聞きしていると、「すいてん」は、キーパーソンのドラムと救世主のボーカル、そして確かな腕を持つギターとベースで成り立っているという印象を受けます。


それぞれの思いを持ち寄り、「すいてん」の中でカタチに

──4人で活動されているみなさんですが、やはり個々に演奏や楽器へのこだわりがあると思います。そのあたりを思い思いにお聞かせください。

maaakun ぼくはいつもシェクターの7弦ギターを使ってるんですが、これなら高い音を殺さず低音が出せるんです。メタルは重くてダークな雰囲気なので、低い、メタル特有の音が出せる多弦のギターじゃないと演奏できませんね。


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maaakunさん愛用のギター。右(白)がメインに使う7弦、左(黒)の8弦はサブで使用するのだとか。


──えっ、7弦のギターなんてあるんですか⁉すみません、知らなかったです…! 素人な質問なんですが、7本も弦があったらネックが太くて持ちにくくないですか?

maaakun 慣れると普通の(6弦の)ギターじゃもの足りなくなりますよ。多弦ギターで活動している身としては、「多弦ギタリストといえば、maaakun」と思ってもらえたらうれしいですね。それから、一ギタリストとしてはもちろんですが、どっちかというとバンドをプロデュースするような感覚で活動していきたいなと思ってます。

──その言葉から、楽器へのこだわりがひしひしと伝わってきます。ギターが多弦ということは、もしやベースも?

ズッキー ぼくのベースも多弦なんです。バッカスの5弦ベースなんですが、低くてどろどろした音が特徴ですね。以前は4弦を使ってましたが、ぼくも同じく5弦に慣れてしまうと4弦には戻れませんね。一時期はプロも考えましたが、自分の思う方向に行けなかったのであきらめました。でも、30歳すぎまでは定職にはつかず、音楽ありきの生活をしてましたね。演奏では、自分の色はあからさまに出さず、でも、ここだと思う部分は強調していきたいと思ってます。

──音楽が大前提だったんですね。控えめな中にもご自身のカラーを出していく、という感じですね。ギターもベースも弦が多いほど音に深みが出るのでしょうけど、相当弾き込まないと弾きこなせないですよね。yu-naさんは中学時代、吹奏楽部でパーカッションをやっていたとのことでしたが、何か思い出はありますか?

yu-na うーん、そうですね。はじめは、力が弱すぎたりテンポが遅かったりでよく顧問の先生に怒られてました。でも、パーカッションのほかのメンバーが辞めてしまって一人になってしまった時、自分が頑張らないと、みんなを引っ張っていきたい、という気持ちになったんです。それがきっかけで、音も変わりましたね。

──そうかぁ、内面も成長して音も成長できたのかな。最初は怒られるほど力が弱かったのに、今ではメタルのドラムをパワフルに叩いてるんですもんね。それにしても、小柄で線の細いyu-naさんがメタルバンドのドラムを叩いてるなんて、ちょっと想像できないですよね。ギャップがすごい。

yu-na そうですね(笑) ギャップがあるってみんなに言われます。でも、そう思ってもらえるのは素直にうれしいですね。

maaakun 「すいてん」の名前の由来も、そういうところからきてるんですよ。「Sweet Temptation」はその名のとおり「甘い誘惑」なんですが、yu-naのイメージそのものですね。

──「甘い誘惑」はyu-naさんのイメージからだったんですね。確かに、かわいい女の子がメタルのドラムを叩くっていうこのギャップにやられる人は多いかも(笑) yu-naさん、ドラムの練習はいつもどれくらいやってるの?

yu-na 週3ぐらいです。基礎練からやるっていう部活の習慣がついてるので、3~4時間ぐらいは叩いてますね。

──たくさん練習してるんですね。yu-naさんは17歳(年齢は取材時)、高校生ということで、そろそろ進路を決める時期になると思いますが、この先もドラムは続けますか?

yu-na そうですね。進学は考えてなくて、アルバイトをしながらドラムを続けたいと思ってます。

──ああ~いいですね。好きなことやりたいことが目の前にあって、それに夢中になれるのはとてもかっこいいですね。さて、メンバーから救世主と呼ばれるボーカルのようさんですが、元々バラード向きの声とのことで、メタルに近づけるようにボイトレを頑張っておられるそうです。声の質が軽くて力任せにしか歌えないから、口の開き方から声帯の動かし方、力の入れ方まで本格的にレッスンを受けているとお聞きしました。メールでのやりとりのみですが、その情熱が伝わってきましたよ。

maaakun ようちゃんは声がパワフルだし練習熱心ですね。人前で歌った経験はないと言いながらも、はじめてのイベントですごく声も出てたし、よく入ってくれたなぁという感じですね。今はyu-naが歌詞を書いてくれてますが、ようちゃんが入ってくれたので彼女に詞を作ってもらうのもいいなと思ってます。やっぱり歌として声にのせてくれるのはボーカルなので。

──なるほどです。みなさんがそれぞれに思いやエピソードを持ち寄ることで「すいてん」として形になっているのかもしれないですね。


音楽は表現手段であり出会い 「すいてん」の今後の展開に期待

──ここまで結成のいきさつや個々の思いなどをお聞きしてきましたが、みなさんにとって「すいてん」、そして「音楽」とはどんな存在ですか?

maaakun  自分が声をかけて結成したバンドってこともあって、自分がしたいことそのものですね。妥協はしたくないですし。極端に言えば、「すいてん」を聴くとmaaakunを思い浮かべてもらえるかなと。音楽は聴く側よりも発信側ですね。音楽は奏でるもの、自分を表現する手段というか。

──発起人ならではの思い入れですね。先にお話が出た、バンドをプロデュースするような感覚っていうのとつながっている気がします。そういう意味でもmaaakunさんは表現者ですね。まさに「すいてん」イコールmaaakunというイメージが私の中でもできました。yu-naさんはどうですか?

yu-na うーん、そうですね。作詞するときにいつも意識してることがあって。基本的には悲しいストーリーなんですが、悲しいだけじゃなくて希望が見えるものにしたいなと思って作ってます。最後まで悲しい曲だったとしても、次の曲に希望を入れたり。

──わぁ~なんだかステキ。歌詞ひとつにもyu-naさんの思いがこめられてるんですね。

yu-na それと、私はmaaakunとは逆に、音楽はめっちゃ聴きます。音楽やドラムはもう生活の一部だし、人との出会いのきっかけでもあります。

──うんうん、音楽は出会いのきっかけになるよね。バンドから始まって、イベントなどでの交流もありますしね。ズッキーさんはどうですか?

ズッキー バンドにあったベースラインを大事にしたいですね。メタルっていうジャンルは、ぼく自身経験が浅いので、参考にいろんなメタルバンドを聴いてます。気になる曲のベースラインはとことん追求しますが、それを変に取り込まず、自分の色を壊さずに「すいてん」のベーシストとして馴染んでいけたらと。

──なるほど。さきほどもおっしゃっていたように、控えめな中にも自分のカラーを出す、ですね。ズッキーさんは職人気質という感じがします。それではここで、ようさんのコメントを。ようさんにとって「すいてん」とは「アットホームメタル」だそうですよ。また、音楽は「飽き性の自分が飽きない」存在だと答えてくださいました。ようさんにとっての「すいてん」は居心地のよい場所であり、音楽はすごいパワーがあるってことかなぁと思います。


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ドラムのyu-naさん(手前)とボーカルのようさん。


yu-na ようちゃんは年は離れてるけど、私にとって友だちみたいに話せる貴重なメンバーですね。

──yu-naさんの「音楽は人との出会い」という言葉をお借りしちゃいますが、ようさんの加入も、きっとその出会いのひとつなんじゃないかなと感じますね。繰り返しになるかもしれませんが、みなさん個性的で、三者三様と言いますか“四者四様”のバランス感が絶妙です。では最後に、バンドとしてこれからの目標をお聞かせください。

maaakun まずはCDを作りたいですね。(2020年の)6月以降はライブを入れていこうと思ってます。この記事がアップされる頃には、ライブがひとつでも決まっていればいいなと。

──ありがとうございます。「すいてん」のみなさんのご活躍、期待しています!


インタビューを終えて

お話を聞けば聞くほど個性派なみなさんですが、バンドとしての一体感は抜群。いろいろなタイプの方がいて、補い合って「すいてん」があるのだなぁと思いました。もしまた機会があれば、もう少し踏み込んでお話を聞いてみたいなぁというのが率直な感想です。今後はライブも増やしていかれるとのことなので、ぜひ一度彼らのメタルを聴いてみてください◎メタルを聴いたことのないあなた、もしかしたらハマっちゃうかもしれませんよ~。
※この内容は、2019年12月7日の取材に基づいて作成した記事です。その後、ベース担当のズッキーさんが脱退され、近日新しいベースさんが加入されることが決まっているそうです。


●Sweet Temptationの情報はこちら
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ライブ映像
https://www.youtube.com/watch?v=CujPf0DMrbI&feature=youtu.be



〇今後の更新について
準備が整い次第、順次掲載していきますので、楽しみにお待ちください。また、取り上げてほしい“ 音楽人”を募集していますので、お気軽にDMまたはホームページからご連絡くださいね☆


〈取材・文/中兵庫音楽人発信委員会&ライター あんこ〉


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