音を楽しもう◎中兵庫の音楽人紹介

兵庫県の真ん中から、音楽人の情報を発信します。

世界でひとつのギターを生み出すギタービルダー◎tomoya yoshikawa

こんにちは。中兵庫音楽人発信委員会&ライターのあんこです。

今回ご紹介する音楽人は、アコースティックギターの製作を手掛けるギタービルダー「tomoya yoshikawa」さん。西脇市内の工房「Guitar Craft Yoshikawa」にお邪魔すると、なんとも興味をかきたてられる個性的なギターが並んでいました。
プレイヤーでもあるyoshikawaさんは、ソロやユニットで多彩な音楽活動を繰り広げておられますが、今回はギターの作り手としてのお顔に迫ってみました。

ものづくりの経験を生かし、自分の楽器を自らの手で

f:id:eclaires:20190810152303j:plain

──ギターを弾く方はたくさん知っていますが、ギターを作っておられるという方にははじめてお会いしました。工房内にいくつかギターが展示されていて、眺めるだけでワクワクしますね。材料の仕入れや加工など、すべておひとりでされているのですか?

yoshikawa 材料の仕入れから販売まで一連の作業すべてを自分でやっています。どんなデザインにするかパソコンを使って設計し、削り出しなどの加工には専用の機械を用います。貼り合わせや塗装など時間はかかりますが、量産できないオリジナルのギターを作っています。

f:id:eclaires:20190810152046j:plain

──世界でひとつのオリジナルギターですね。そもそも、ギターを作りはじめたきっかけは何だったんですか?

yoshikawa 10代から半世紀ずっとギターを弾いてきて、自分で弾く楽器を自分で作れたら楽しいかなと思ったんです。会社を早期退職して作りはじめたのが2014年なので、今年で5年が経ちますね。長年電機メーカーに勤めていた中で金属加工の経験があり、ものづくりは好きなんです。でも、今度は金属じゃなくて木を削りたいと思ったんですよ。

──金属じゃなくて木を削りたい、と。おもしろいですね(笑)。ギターには長く触れてこられたのですね。ギターを弾いていても、自分で作ろうと思う人は少ないですよね。ものづくりに携わってこられたからこその発想だと思います。ギターの製作技術はどこかで学ばれましたか?

yoshikawa 最初は1年間、ギターメーカーが運営する専門学校に通いました。実際にギターを作っている工場の見学や、アメリカの楽器フェスティバルにも行きましたね。大まかな作り方を学んだあと、さらに自分なりに研究して工房を構えました。

f:id:eclaires:20190810151842j:plain
倉庫を改装したという工房。所狭しと本格的な機材が並びます。


──退職後にまた新しいことを学んだり、機材をそろえたりと、本当に好きでなければできないことですね。その熱意に感心させられます。


細部までこだわり抜いた個性派ギター

f:id:eclaires:20190810152017j:plain

──yoshikawaさんのギターは、ボディにちょっと丸みがあったり、サウンドホールの位置が真ん中ではなかったりと、私が知っているギターと少し違って個性的だなという印象を受けます。ギターを作る上でのこだわりやコンセプトを教えていただけますか?

yoshikawa 一般的なアコギのボディはフラットトップといって表面が平らな形なんですね。それに対して、湾曲しているものをアーチトップと呼び、こちらのほうが比較的高価で使う人が少ないのですが、独自のデザインを作ることが可能です。トップエンド側は、腕に当たる感触をよくするために丸みを持たせています。デザインも個性的になりますしね。それから、サウンドホールは、音が自分の耳に届くように角度をつけています。さらに、トップ表面の浮彫りの装飾。こんな装飾を施せるのも、削り出しで加工するからできることで、ここがオリジナルの醍醐味ですね。ここまで手をかける製作者はなかなかいないでしょうね(笑)。フラットトップのギターも作りましたが、やはりアーチトップのほうが作っていて楽しいです。

──へぇ~。いろんな工夫が施されているんですね。ギターを弾かない私でも、yoshikawaさんの説明をお聞きしていて、そんなギターなら確かに弾きやすいだろうなあと思います。

yoshikawa ちょっとした工夫でとても弾きやすくなるんですよ。ギターを演奏する上でいちばん大事なことは、やはり正確な音が出せることです。チューニングが少しでも狂っているときれいな音が出ません。そのチューニングに欠かせないのが、弦を支えるサドルです。市販のギターはサドルが固定式なんですが、ここを動かせると弦の調整がしやすいので、ぼくは可動式にしています。これはギターを作っていて気付いたことなんですけどね。音質の良さを求める人は多いですが、それより何より正確な音が出るギターが本物のギターと言えるんじゃないかな。

──なるほど。楽器はやはりチューニングが大事ですね。私、サドルという名前も役割も今はじめて知ったのですが、yoshikawaさんはプレイヤーでもあるからこそ実感としてわかることでなんしょうね。デザインも実用性も細部にまで気を配っておられますが、そうなると完成までかなりの時間がかかりそうですね。1台作るのにどれくらいかかるものなんですか?

yoshikawa ボディからネックまですべてにおいて考え抜いて作っているので、相当な時間を費やします。この5年で約10台手掛けましたが、いちばん長くかかったもので1年ですね。

──1年ですか!長い!根気のいる作業だと思いますが、どんなことを考えて作っていらっしゃるんですか?

f:id:eclaires:20190826103821j:plain
製作中のギター。板を貼り合わせてボディを作ります。


f:id:eclaires:20190826103820j:plain
さまざまな加工を経て、立派なギターが完成。


yoshikawa 音楽を聴きながら、楽しみながら作ってますよ。思うようにいかないことも、失敗することももちろんありますが。でもね、時間をかけて作ったギターは本当に我が子のようで、完成したときは喜びもひとしおです。

──あ~そうでしょうね。地道な作業をひたすら続けられるのは、やはり楽しいという気持ちと、できあがったときの喜びが大きいからでしょうね。

f:id:eclaires:20190810152019j:plain
約1年かけて作ったというマイギター。yoshikawaさんの手になじんでいます。


yoshikawa そうですね。ひとつ作ったら、次はこういうのが作りたいなというイメージが湧いてきます。前回できなかったことを取り入れて進化させていく、それも楽しいですね。実はね、このギター(マイギター)にはマイクを仕込んでるんですよ。弦を弾くだけがギターの演奏方法じゃない。パーカッションとしてボディ部分を叩く演奏スタイルもあるんです。(と、実際に演奏して聴かせてくださいました。)

──わぁ、いい音ですね!ギターはひとつなのに、パーカッションが入ると音の幅が広がりますね。


自分の音楽を追い求める人のために作りたい

f:id:eclaires:20190810152020j:plain
工房の窓には、青色が目をひくギターのステンドグラスが。


──ポリシーを持ってギターを作られているyoshikawaさんですが、オーダーを受けることもありますか?

yoshikawa ユニットを組んで一緒に音楽活動をしている仲間がいるんですが、これからその人のオーダー品に取りかかるところです。これまではどちらかというと自分のために作ってきたので、1台にかなりの時間を費やせましたが、オーダー品となるとそうはいきません。お客さんの要望に沿いながらコストや時間を工夫する必要がありますね。でも、装飾の彫刻など自分のこだわりは残したいと思ってます。

──使い手のことを考えながらも、ご自身が手掛けた証をさりげなく残す…職人としての心意気を感じます。

yoshikawa ギターはメンテナンスを怠らず上手に使えば一生ものの楽器です。だからこそ、ちゃんとしたものを作りたい。ギターを作っていて思うのは、ブランドのギターに固執する必要はないってこと。好きなギタリストが使ってるから、かっこいいから、と憧れを抱いて同じギターを買う人は多いし、それはそれでかまわないと思います。でも、だからってギタリストと同じ音は出せないんですよね。いろんなジャンルの音楽を聴くことで世界が広がるように、ギターもいろんなギターを知って、自分の音楽を追求してほしい。そして、個性を出せる楽器を求める人に、ぼくのギターが受け入れてもらえたらなと思います。

──yoshikawaさんの言葉一つひとつから、半端ないギター愛が伝わってきます。きっとそんなギターとの出合いを待っている人がたくさんいるはず。

yoshikawa そうですね。ギターメーカーに真似のできないギターを作ることで、みんなが持っている固定観念みたいなものを崩していけたらいいなと思うんですよ。

──私も今日お話をお聞きして、ギターの形はこういうものっていう固定観念が崩れました(笑)。自分の音楽を求める人が、ひとりでも多くこの工房を訪ねてくれたらいいですね。


インタビューを終えて

yoshikawaさんの手から生み出されるギターは、言葉どおり世界でひとつのオリジナル。ギターを弾く楽しみもその構造も熟知しているからこそ作れるものなんだと思います。だからと言って堅苦しい印象はなく、気さくでユーモアあるお人柄のyoshikawaさん。取材中も話が弾み、時間を忘れてギターの話に聞き入ってしまいました。
今回は作り手としてのお顔にフォーカスしましたが、プレイヤーとしてのyoshikawaさんのお話も改めてうかがってみたいと思います。


tomoya yoshikawaさんの情報はこちら
Facebook
https://m.facebook.com/tomoya.yoshikawa.31?fref=fc_search&ref=bookmarks
工房「Guitar Craft Yoshikawa」
西脇市郷勢町(西脇市役所から車で約2分)
◎少しでも気になった方は、上記Facebookまたは音楽人発信委員会へご連絡を。

〇次回の更新は10月25日(金)
プロ三味線奏者として多数の公演をこなしている「吉川 大山」さんをご紹介します!お楽しみに☆


〈取材・文/中兵庫音楽人発信委員会&ライター あんこ〉


こちらもチェックしてね!
■中兵庫音楽人発信委員会HP
https://rpmb09143.wixsite.com/nakahyougo
オリジナルグッズ販売中!

■エクレアーズ軽音楽サークル LINE@
https://line.me/R/ti/p/%40xhm7961k